土曜日, 11月 25, 2006

入社式ってどこ?と言っていた頃

 当時同期で入社した中で親しい人にはよくこう言われる。 「○○(僕)が真っ先に辞めると思っていたのに本当に意外だよな。」  こう言う彼を含めてたくさんの人間が転職したり中には起業したりしているのだ。

 僕自身、会社に入った頃は自分が企業なんかでやっていける人間とは思っていなかった。学生時代は音楽しかやっていなかったし、常識も社会性も自信ない。とにかく必死でついていかないと、と思っていた。必死の方向がやや人と異なってはいた訳だけれど。

 1985年3月31日。明日は入社式であり僕は社会人としての一歩を踏み出すことになる。その日は学生時代最後の日であった。僕は旅に出ていてた。今日中に東京の叔母の家(家を見つけるまでしばらく間借りすることになっていた)に戻り、明日から会社通勤だ。
 旅行の道中何度と無く思う。明日はいよいよ入社式だなあ、気分を入れ替えてがんばらなけりゃ!、と。そこで気がついた。 「待てよ。入社式ってどこでやるんだろう。何時に。」

 まあ、そんなような人間だったのだ。気持ちはひきしまっていたつもりなのだが前日までそんな確認もせず旅行に出ているだなんて。もちろん会社からの通知は来ていただろう。寮に住んでいたので郵便物を僕がちゃんと受け取らなかったかどこかに紛れてしまったのだろう。

 入社式は当然、本社でやるものと思っていたし時間も9:00からだろう、と漠然と考えていたのだがよく考えると大きな会社だからどこか別の会場かもしれないし、初日はもっと早く集合するかもしれないではないか。  誰かに聞かなくちゃ。だがあいにく今日は日曜日なのである。会社は休み。困ったな、と。とりあえず9:00に本社に行ってみる?それから誰かに聞けば何とかなる? いやいや全然違う場所だったら大遅刻だ。何しろ東京って広いからなあ。

 会社の代表電話番号にかけてみることにした。録音メッセージが流れる。その中で緊急の場合は何番と言っている。その番号にかける。警備の人らしき人が出た。明日の入社式のことですけど、と聞いてもちょっとわかりません、との答え。そりゃそうだろう。僕は言った。 「それでは申し訳ありませんがどなたでも結構なんで会社にいる社員の方に回していただけませんか?」  警備の人も明日からの新入社員なのでまあムゲに電話を切るようなこともなく、何とか休日出勤をしているどこかの部門の人につないでくれたのだ。その人に尋ねる。 「今年入社するものなのですが、実は明日の入社式の場所と時間がわからないのです。教えていただくわけにいかないでしょうか?」

 その人も困ってしまったようだった。そりゃそうだろう。大きな会社なので人事関連の仕事でもしていない限りその年の入社式がどこか、なんて知ったことか。ところがその人は困っている僕を哀れに思い、社内の情報を調べてくれると言うのだ。 「ありがとうございます!」  僕は叔母の電話番号を伝えて電話が鳴るのを待つ。小一時間して電話が鳴った。その人が教えてくれた。やはり入社式は某ホテルの会場で時間は9:00。助かった~!
 入社式に来れなくてクビになったら洒落にならんもんな~。

 入社して配属された部門の新人オリエンテーションでこの話をしたら、新人の中では結構受けたのだがオリエンテーションが終わってからその部門の新人を預かる課長はこそっと僕を呼んでこう言った。
「○○、お前はもう少し個性を隠さないと会社ではやっていけんな。」

 その頃は経済状況も会社の業績も今より余裕があったのと、特に僕の配属された部門が社内の技術部門でそういう意味ではゆったりしていた。新入社員研修は期間として1年3ヶ月もあって最初は自習書をひたすら読まされた。僕は僕なりにこのように考えていた。会社に来ているのだから会社で本を読むなんてもったいない。会社にいる時はできるだけ先輩と話をして仕事のことや会社のことを少しでも知る努力をしよう。それから夜は会社の人と飲みに行こう。本を読んで勉強するのは家に帰ってからでもできるのだから。

 実際にそのように行動していると毎日色々な人と飲み会をやることになり、金を使う使う、新人の薄給の身分をわきまえず使うものだからクレジット・カードの借金が毎月毎月積もっていった。やっと返せたのは冬のボーナスだったかな。

 僕は酒が好きだし、まあたくさん飲む方だ。強いかというとそうでもなく、翌日は二日酔いの時も多い。ある二日酔いの午前中にもう起きていられなくて最近覚えた会議室の予約を行い、同期の新人をドアの入り口近くの席に見張りとしてすわらせて会議室で寝ていたこともある。

 まあビジネス・マナーなんて常識は普通考えればわかることも身に付けていない。ある日などは朝時間がなくてひげを剃らずに家を出て、通勤の途中で缶コーラを買い、会社に入って自分の席に座り、まずタバコを一服。灰皿は会社にあるのだが面倒なのでコーラの空き缶へ。あげくの果てに自席でおもむろに電気シェーバーを取り出しそのままグイーン・グイーンとひげを剃り始めた。  僕のことを色々世話を見てくれていて夜も付き合ってくれる先輩のKさんが、これにはさすが驚いて、
「○○、○○、ちょっと来い!」
と僕を人のいないところに引っ張って
「いいか、○○、まずタバコを吸う時は灰皿を使え。ひげは剃って来い。もし会社で剃らざるを得ないんだったらトイレに行ってやれ。」  と、もう幼稚園児みたいなことを注意してもらったのだ。
 このK先輩が後に会社でソフトウェア製品を担当していた時にお世話になった。あのヤンチャ坊主が会社で何とかなってるなんて、と思ってるに違いない。

 それでも要領がいいので研修の成績はまずまず。課題を自主的にやるような研修の時は早めにそこそこのレベルで終えてしまって似たようなタイプの新人と抜け出て喫茶店にさぼりに行く。気持ちは一生懸命の積もりなのだが、やってることは学生以下だったように思う。
 そのツケはすぐにやってきた。やはり社会人としてまともな感覚を持っている同期の人にはとてもかなわず、研修の成績もどんどん落ちていく。僕が本当に世の中の厳しさを身にしみるのは研修期間に希望を出して社内技術部門から現場に異動し、初めてのお客様を担当した頃だ(初めてのお客様に学んだこと参照)。

 それでも必死にくいついたので、何とか今もこの会社で仕事をしているという訳だ。

 入社した時の同じ部門の同期というのはずいぶん長く付き合いが続くものだ。  頭の回転の早いOは転職した後に自分の会社を起業、今はフリーのWebデザイナーをやっている。皆にからかわれてJohn呼ばれていた男も実は優秀で転職を繰り返して外資系日本法人の社長をやったりしている。OやJohnとは時々会って話すが世界が違ってとても面白い。英語が完璧だったKはストレージ会社に転職。どうしているだろう。当時から優秀だったSや入社した時からしっかりしたビジネスマンだったIは同じ会社の重鎮として重要な仕事をしている。女性のSさんもエンジニアとして最重要なお客様のプロジェクト最前線にいる。今でも助け合える仲間達だ。

 という訳で入社当時は社会人としてまったく自信が無かった僕も何とか社会で生きていくに必要なことを身に付けた。偉そうに新入社員の面倒も見る。 「入社式ってどこでやるんだろう?」というのは秘密。でもないか。時々話している。というか現に今も書いてるし。

 もちろん今でもヤンチャな面は残っているようだ。ちょっとワイルドで型破り、そういうマネージャでありたいと思っている。

9 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

初投稿です!
リンダリンダ当事者の匿名希望です。

一連のBLOGは、知っている話もあり、全く知らず、かつ私の持ってるKOHSさんのイメージからかけはなれてたり、と楽しく読ませてもらってます♪

kohs_K さんのコメント...

かけ離れているのはメルヘンと感情的な一面? 意見を聞かせてもらえると嬉しいのだけど。

匿名 さんのコメント...

お酒の場で聞いたことがあって、勢いで作り話も混じってるんだろうなーと思って聞いてましたが、実話だったとは。信じられません。でも、いつまでもヤンチャ心を忘れないでいてほしい!!!後輩としてのコメントです。

kohs_K さんのコメント...

励ましてくれてありがとうございます。昔から思うとずいぶんマトモになってる訳ですが、本質はそんなに変わらないので自分のスタイルでやっていく積もりです。

匿名 さんのコメント...

さすがです。聞いてはいましたが全く今知っているKOHさんと違和感がありません。大物です。本人きがつかず、大物のままだとおもいます。
私は小物です。入社式の日に自分の部門のミッションが初めてわかって、人事担当の人を探り当て”転属させてください”と言って笑われました。又、セクハラおやじで有名なUさんが教育係だった頃、”脱川崎の会”の先導者の一人として、しっかりお灸をすえられました(いまでも悪いと思ってません。だって業後に都内のディスコに行くとか、かわいいもんだったんですから)。。でも、懐かしいです。ちなみに脱川崎の会の主犯は、IBM->オラクル(美人なので数日でオラクルのホームページに写真がのってました。すとっくぷションでかせぎまくり。)ー>マイクロソフトー>で今仲間と企業しました。すごいなああ。

kohs_K さんのコメント...

コメントありがとうございます。そうですか。自分ではだいぶマトモになってきたのでは?と思っていたのですが違和感ないですか?(笑) 世の中わかっていなかっただけなので大物ではないですよ。Uさんとは最近まで仕事の縁がありましたがセクハラはあまり変わってないみたいでした。脱川崎の会ってたしかMさんも所属していたやつですね? お互い懐かしい頃はあるものです。

kohs_K さんのコメント...

私も昔、中央線で弁当食べたことはありますが。。あと横須賀線ではよくビール飲んでました。最近はやらないかなあ。

匿名 さんのコメント...

会社でこのBLOGを読んでいたら、吹き出してしまいました!! だって、まんまなんですもの!!! 昔から変わってないって、ある意味凄いですよ♪ ワイルドか・・・というと(ー'`ー;) ウーン・・・微妙ですが、“やんちゃ”“型破り”は、大きく納得!!!!!
そんな破天荒なマネージャー・・・少なくとも秘書は大変・・・(^◇^;) でもjazz pianoは素敵!! 目を閉じて聴くと、もううっとり!!但し、目を閉じて。。。また漫才しましょ!!!

kohs_K さんのコメント...

sisiさん、
そうですか、あまり変わってないというご意見が多いですね。秘書の方には確かに面倒をおかけしてます。またライブ来て下さいね。目をあけて。